海軍

アメリカ海軍のP-3哨戒機

海軍(かいぐん、: navy)は軍事作戦のために主に艦艇を使用する軍事組織を言う。

概説

海軍は本質的に海洋を活動領域とする軍隊の一種であり、その意義は海洋がどのように社会と関係しているかに影響している。地球の表面はその約70%が海洋であり、沿岸地域の集落は古来より船舶を活用しながら生活を営んでいた。古代ギリシアの哲学者アリストテレスは海洋が国家にもたらす影響に言及している。彼は安全保障貿易の面で海洋は国家に重要な便益をもたらすと述べており、例えば戦争において海外から派遣された援軍を収容するためにも、また国内の余剰生産物を輸出するためにも海洋という地理的環境は有用であると考えていた[1]。さらにイギリスの哲学者であり、政治家でもあったフランシス・ベーコン政治的な見地から海洋の重要性を論じており、海を支配することができれば、大陸を領有する国家と比べてより自由になり、戦争の規模や範囲を制御することができることを主張した[2]。したがって、海洋とは国家や人間の生活にとって有益であり、しかも陸地とは全く異なる環境であると考えることができる。陸軍や空軍と異なる海軍に固有の性格とは、このような海洋の重要性や特殊性を踏まえて軍事作戦を遂行する能力を持つことであると特徴付けられる。

海洋において海軍が担う具体的な戦略的役割は海軍戦略の理論によって規定されている。アメリカの軍人アルフレッド・セイヤー・マハンは『海上権力史論』や『海軍戦略』において海洋戦略を理論化し、海軍の使命は制海権(海上優勢)の獲得にあると論じた[3]。マハンの格言に『海を制する者が、世界を制する。』がある。これは、現代に至っても、各国海軍の存在意義を証明する骨幹となっているとはイギリスの軍人 フィリップ・ハワード・コロムの『 海戦論』によって初めて提唱されえた概念であり、海洋において航海を管制する権力である。これを保持することは味方の船舶の航行を保全し、同時に敵の航行する船舶を阻止もしくは破壊することとなる。軍事作戦の用語法では前者を海上護衛、後者を通商破壊と呼び、海軍の任務の一部としている。しかしマハンは海軍が制海権を確立するための方法として通商破壊だけでは不十分であると考えていたために敵の艦隊を撃滅する艦隊決戦が必要であると強調している。敵の艦隊を破壊することによって、敵の商船隊をも完全に撃滅することが可能となり、したがって敵に対する海上封鎖が実現できることとなる。一方でマハンとは異なる見地から『海洋戦略の諸原則』を著したイギリスの戦略研究者ジュリアン・コーベットは陸軍と海軍の相補的な関係を踏まえて艦隊決戦による制海権の確立を絶対視していない[4]。海洋という地理的特性を考えれば制海権を完全に確立することは現実的に不可能であり、むしろ海上護衛と通商破壊こそが海軍の本質的な任務であると捉えていた。そして戦争全体における海軍の戦略的任務として海洋から大陸に対して適時適所に戦力投射能力を発揮することを主張した。これまでの議論から海軍とは海上交通路を排他的に確保するために制海権を掌握することが重要であることはわかるが、そのために海軍がどのようにあるべきかは議論が分かれる問題である。

海軍という軍事組織の具体的な構成要素とは船舶である。英語で海軍を表すnavyの語源はラテン語の"navis"であり、これは軍艦貨物船漁船などあらゆる船舶の集合体を意味していた。工学的には船舶は液体から浮力と復元性を得ながら機関の推進力で航行する構造物であり、その内実は船舶工学技術革新や使用目的の複雑化に伴って歴史的に変化してきた。そのため現代の海軍では航空打撃力を持つ航空母艦、潜水作戦能力を持つ潜水艦、水上艦艇である戦艦巡洋艦駆逐艦などの艦艇を擁しており、地域や時代によっては海兵隊などの陸上戦力、対潜戦闘能力を持つ航空戦力、核兵器などを運用する場合もある。海軍は航空打撃戦、対水上戦闘、対潜戦闘、機雷戦、電子戦、水陸両用作戦、海上護衛戦、通商破壊、洋上補給などさまざまな海上作戦を遂行するために、諸々の作戦能力の均整がとれた艦隊を編制することが求められる。しかしながら、このような一般原則に反して海軍は地域や時代に応じてさまざまな形態に変容してきた。マハンは艦隊決戦の重要性を認識していたために大型艦を中心とする艦隊を主張し、アメリカ海軍の艦隊は積極的に海外に派遣する外洋海軍としての能力が期待された。しかし水雷艇や潜水艦が登場した頃、フランス海軍では青年学派によって当時優勢な海軍力を誇っていたイギリス海軍に対抗するために外洋に機動力がある巡洋艦を、沿岸には潜水艇や水雷艇を導入する守勢的な海軍の構想が提唱され、ドイツの軍人ティルピッツもイギリス海軍と直接対決しない抑止力としての危険艦隊の構想を主張した。このような沿岸海軍の構想はロシア海軍でも青年学派の影響で受け入れていたが、ロシア革命後には陸主海従の方針を採り、キューバ危機が起こるまでは外洋に展開する能力を期待されなかった[5]。このように海軍の在り方はその海軍を取り巻く戦略環境によって可変的なものであり、また軍事技術や戦略思想の変化にも影響を受けるものだと考えられる。

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