ロールス・ロイス マーリン

オーストラリアで展示されたマーリンエンジン(2005年)

マーリン(英語:Merlin )はイギリスロールス・ロイスが開発、生産した航空機用レシプロエンジンである。液冷V型12気筒ガソリンエンジンで、バルブ駆動方式はOHCであり、バルブ数は吸気2、排気2の4バルブである。

改良を重ねられながら、主に第二次世界大戦中のイギリスの軍用機で使用された。特に活躍したスピットファイアランカスターモスキートのエンジンとして搭載されたことからもわかるように、軍用の航空用レシプロエンジンとしては最も大きな成功を収めた代表的なエンジンである。

排気量を変更することなく、スーパーチャージャーの改良によって性能を向上させたことから、機体の変更を最小限に抑えることができたため、大戦全期間を通じて利用されることになった。イギリス本国での生産は、ダービークルーグラスゴーのロールス・ロイス社工場で実施されたほか、同じく自動車メーカーである(高級車ロールス・ロイスとは対極のような大衆車メーカーであった)イギリス・フォードマンチェスター・トラフォードパーク工場でも生産された。

イギリス以外にもアメリカパッカードがマーリン66をマーリン266としてライセンス生産を行い、P-51 マスタングアリソン V-1710に代わって使用された。P-51はエンジンをマーリンに変えたことで大成功をおさめた。

クロムウェル巡航戦車チャレンジャー巡航戦車コメット巡航戦車センチュリオン戦車に搭載されたミーティア・エンジン英語版は、このマーリンエンジンを戦車用に改修したものである。

開発

1930年代初頭、フレデリック・ヘンリー・ロイスは当時順調な売れ行きを見せていた航空エンジン「ケストレル」に過給機を組み込んだ885馬力のペレグリン (Rolls-Royce Peregrine) を開発した。このペレグリンを重ね、爆撃機のような大型機向けにヴァルチャーの開発が開始された。

一方、ケストレルを改良して作られたバザード (Rolls-Royce Buzzard) をさらに改良すれば、1,500馬力のエンジンを開発できる見込みがあった。しかし、それでは800馬力級と1,500馬力級の間に大きな隔たりができてしまい、中間クラスのラインナップを欠いてしまうため、ロールス・ロイスは政府の支援を受けることなく独自に1,100馬力のPV-12を開発しはじめた。

PV-12は1935年に新型の蒸発冷却器を採用して複葉機ホーカー ハートに搭載されたが、この冷却器に問題があることが判明した。アメリカからエチレングリコールを輸入できるようになった際、冷却器は従来の液冷式に戻された。

1936年、イギリス航空省は480 km/h以上を発揮できる新型戦闘機の要求を明らかにし、ホーカー・エアクラフトスーパーマリンもこの要求に応えて設計した機体にPV-12を搭載した。1936年にホーカー ハリケーンとスーパーマリン スピットファイアの生産契約が結ばれると、ただちに最優先供給にPV-12が据えられ、コチョウゲンボウを意味する「マーリン」の名がつけられた。

搭載機種

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